神戸「倚松庵」谷崎潤一郎が愛し、細雪の舞台にもなった旧邸をレポート

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今回は兵庫県神戸市にある倚松庵(旧谷崎潤一郎邸)を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。

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1.谷崎潤一郎が7年間暮らした神戸の住まいを訪問

今回訪れたのは、兵庫県神戸市の東灘区に建つ倚松庵(いしょうあん)です。
倚松庵は、作家谷崎潤一郎が1936年11月から1943年までの7年間に渡り住み、「細雪」など谷崎の代表作もこの家がモチーフとなりました。

細雪は当時の大阪船場を舞台に4姉妹の日常を綴った谷崎の代表作の一つですが、その舞台となったのが松子夫人とその妹たちと生活したここ倚松庵でした。

現在の倚松庵は、神戸新交通六甲アイランド線の橋脚建設計画により1990年に移築されたもの。
引っ越し魔として知られ、関西に移り住んでからも13回もの引っ越しを行った谷崎ですが、ここ倚松庵には7年間に渡って住んでいました。
大家とのトラブルにより立ち退くことになるのねすが、トラブルがなければさらに長い期間暮らしていたであろう倚松庵は、谷崎にとっても特別な住居でした。

魚崎駅から神戸ライナーの高架沿いを程なく北上すると、倚松庵の建物が見えてきます。
現在建物は入館料無料で一般公開されている他、文学に関するイベントスペースとして利用されることもあります。

入口には倚松庵の説明が石に彫られています。

東側の門をくぐり、そのまま直進すると玄関がみえてきます。
私が訪れた時は少し後の時間帯にイベントがあるようで、スタッフの方々が慌ただしく準備を進めていました。

2.作品の舞台のモチーフにもなった惚れ惚れするような和洋折衷住宅

倚松庵の内部は玄関から伸びる中廊下を挟んで1階は右手に水回りや女中部屋左手に応接室、食堂、和室と続きます。

この日は応接室でイベントを行うようで、客席の準備が進められていました。
外観は和風の建物でしたが、内部は洋室が広がっているのはちょっと驚きです。

明るく自然光が降り注ぐ板間の空間は、大きな開口部もあってか実際の大きさより広く見えます。
ステンドグラスの嵌め込まれた建具やマントルピースなども見応えがあります。
また天井の照明は半球形の間接照明となっているのも注目ポイント。陰影に一言のある谷崎らしさが垣間見れます。

元々この家は、神戸の領事館で働くベルギー人とその家族が住むための住宅としてつくられていたので、当時としては最新鋭のモダンな住宅であったことが伺えます。
当初谷崎はこの住宅のすぐ近くの借家を借りようとしていたそうですが、この邸宅に惚れ込み、説得の上家主を引っ越させてこの邸宅を借り受けたというエピソードもあります。

こちらは奥の和室です。
細雪でも度々登場するこの和室もとてもモダンな設えです。

板の間には下部に障子がはめ込まれていたりと、中々他では見ることのできない興味深い和室空間を味わえます。
倚松庵でとりわけ興味深いのが、開口部の多さで、刻々と変化する外の光や空気感が様々に伝わってくるようなデザインに惚れ惚れしてしまいます。

こちらは浴室ですが、こうした五右衛門風呂をはじめとする裏手の部分もじっくり見ることができて、ととも面白いです。

3.かつての暮らしに思いを馳せながら館内を堪能

階段を上がった2階には3つの和室があります。

こちらも当時としては先鋭的だった廊下を取り入れた間取りとなっていて、それぞれの部屋に接続しています。
窓の先には欄干が巡り、明るい自然光が降り注ぐ和室も素敵です。

現在の建物は当初の場所からは移築され、新しい建物に囲われていますが、谷崎や松子さんはここからどんな景色を見ていたのだろうと想像が膨らみます。

和を基調とし、陰翳豊かな空間の中に大正~昭和初期ならではの合理性や、海外からの文化の影響が垣間見られるのも面白いです。

古い簞笥や鏡台などもここに住んでいた人の生活が想像できます。
文豪や作家の記念館も面白いですが、実際に生活していた旧邸ならではの楽しみがあります。

部屋はギャラリーとしても使われていて、移築前の屋根瓦なども展示されていました。
作品として読んでいた舞台が実際に体験できるのはとても面白く、もう一度作品を読み返したくなりました

倚松庵をたっぷりと堪能して、この日の文豪スポット巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメのスポットですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。


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倚松庵(旧谷崎潤一郎邸)
住所:兵庫県神戸市東灘区住吉東町1-6-50
アクセス:魚崎駅から徒歩約5分
竣工:1929年(1990年移築)
開館時間:10:00~16:00
入館料:無料
その他:原則土曜日、日曜日のみ開館

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