『クリスマス・キャロル』~強欲ジジイのハートフル改心物語~

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『クリスマス・キャロル』といえば多くの人が題名くらいは何かしらで聞いたことがあるのではなかろうか。

ミュージカルや映画を観たことがあるという人もいるかもしれない。

では、原作の物語を読んだことがある人は?

もしかしたら、有名な作品のわりに(もしくは有名な作品だからこそ)意外と少ないのではないだろうか。
(最初から最後まで読んだことはなくてもなんとなくあらすじだけは知っているという人もいるかもしれない)

何を隠そうわたしはイギリスの大文豪ディケンズがわりと好きであるし、クリスマスといえば定番中の定番作品であり読んでおいておそらく損はないので(この考え方がすでにケチ臭いスクルージ的であるが)、みなさんにもおすすめしたく、ここで紹介させてもらおうと思う。

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あらすじ

舞台は19世紀イギリス、商社を経営するドケチ因業強欲クソジジイのスクルージはクリスマスに貧しい暮らしを送る人々への募金を募りに来た紳士や食事に誘いに来た唯一の肉親である甥、商会で働く書記らを冷たくあしらい、一人暗く静かな家へと帰る。

そこへ現れたのは商会のかつての共同経営者、マーレイの亡霊。
鎖に繋がれおそろしい姿をした亡霊はこれからスクルージの元へ三人の幽霊が現れるという。
それらの導きを受け入れねば、彼もマーレイ同様苦しみながらさまよう亡霊になる道を辿るのだと。

幽霊たちの訪問を受け、スクルージは過去・現在・未来のクリスマスの幻影を見るがー。

以下、ネタバレを含みます。

作品の読みどころ

  • 1.まわりの人に優しく寛大であることは自己肯定と心の余裕につながる?

正直、「逆じゃね?」と思いたくなることもある。
「心に余裕がないと人に優しくなんて出来ん!」というご意見もごもっともである。
しかしこの忙しない世の中、心に余裕ができるのって一体いつ?
それを待つより、まずは自分から優しさを差し出してみてはどうだろうか。
そう、あのパンの顔を持つヒーローのように。
まあ、やってみようかな。クリスマスだし。
なんとなく寒いし日も短くなって寂しい気持ちになりがちな年末だけど、この「クリスマスだし」というよくわからないオマケというかボーナスのようなものを他人に気前よく差し出せるくらいの心の余裕は持っておきたい気がする。

  • 2.クリスマスのお祭り感を味わう

きれいに飾り付けられたクリスマスツリーに赤々と燃える暖炉、たくさんの詰め物でパンパンに膨れた丸焼きのチキンにプレゼントを楽しみに待つ子供たち、それを囲む人々の笑顔。

そんなザ・クリスマスを体験したことがあってもなくても、読むことで映像が目に浮かぶこと間違いなしなのはさすがの文豪ディケンズ。

現代日本人のわれわれがクリスマスというイベントをどう捉えどのように過ごすかとは別に、ああ、この時代のこの国ではこういう文化だったんだねって普通に(素直に)読めば楽しいワクワクした気持ちになれる。

ダンスパーティーや家族でごちそうを囲む場面はそこに自分も参加している気分で読みたいものだ。

  • 3.ちょっと捻くれた読み方をすると…

ドケチ因業強欲クソジジイであるスクルージ爺さんの改心がちょっと早すぎるというか、チョロすぎる気がする。

こんなに簡単に改心しちゃうの?と物足りなく感じてしまう自分の方がよっぽど心が捻くれているのでは…

古典の王道的な作品を読むときは、とにかく素直に、純粋な気持ちで受け取るように心がけている。
そうでないと魅力が半減してしまう作品もあるからだ。
クリスマス・キャロルはまさにそういう作品である。

今回わたしは何度目かの再読で、たまたま「ああ、温かい気持ちになれる良い作品だな」と思う精神状態であったのだが、正直初めてこの物語を読んだときは教訓くさくてあまり好きになれなかった。

現代日本にだってスクルージのような人はたくさんいるし、わたし自身の中にだって、小さなスクルージは間違いなく存在する。
そういう自分の分身を見せつけられて、バツが悪い気持ちと「別にこれを読んだからって改心なんかしませんけど?」という捻くれた気持ちが同居して複雑なマイハート。
でも、それが一番リアルで等身大なわたしたちなのかもね。

最後に

今回読んだ村岡花子訳は少し古めかしい感じもあるけれど、決して読みにくくはなく古き良き児童文学の香りが味わえてそれもまた優しく温かい気持ちを起こさせてくれる。

一度読んだことがある人でも、わたしのように再読したら印象が変わる可能性もあるので、クリスマスの時期にもう一度読まれてみてはいかがだろうか?

マヤ
マヤ

クリスマスおめでとう!

タイトル:クリスマス・キャロル
著者:ディケンズ
出版社:新潮社(新潮文庫)
ページ数:189ページ
定価:473円(税込み)

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