今回は愛知県の明治村に移設された内閣文庫を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
1.近代建築を保存・公開する建築博物館に移設された図書館を訪問
今日訪れたのは、愛知県の犬山市にある博物館明治村です。
明治村はその名の通り明治時代以降につくられた貴重な近代建築が移築・保存されている近代建築の聖地。
名古屋駅から高速バスで約1時間20分ほどのところにある約100万㎡ほどの敷地には、老朽化や建て替え計画にあった貴重な建築が移築されています。
明治村は高度経済成長に伴う急速な都市開発により、貴重な建築群がいくつも建て替えられていく中でそれらの建築群を移築・保存して後世に残すことを目的に開村しました。
入村には、明治村バス停を降りてすぐの所にあるチケットカウンターでチケットを購入して入村手続きを行います。
入村チケット(乗り物1日券は+1300円)
大人:2000円
シニア(65歳以上)
大学生:1600円
高校生:1200円
中学生:700円
小学生:700円
基本的にはこの入村チケットですべての建物を見学できます。
園内は1丁目から5丁目の5つのエリアに分かれ、多くの重要文化財や登録有形文化財に指定されている建物が残されていますが、今回紹介する内閣文庫の建物もその内の一つです。
内閣文庫は1873年に太政官に設置された図書掛をルーツに持つ図書管理機関で、江戸幕府が収集してした古文書や明治以降に収集された様々な蔵書をコレクションしていました。
内閣文庫という名称は、1885年に内閣制度が発足したことに伴って内閣文庫と改称されたもで、明治村に移築された建物は明治時代末期に1911年に皇居大手門内につくられた本館・事務所棟です。
建物は左右対象のルネサンス様式のデザインとなっていて、明治村の自然溢れる丘の上で堂々とした姿を保っています。
設計を手掛けたのは当時の大蔵省で建築の設計や研究を行っていた大熊喜邦です。大熊氏といえば後に数々の県庁舎や警察省や文部省の庁舎などの官庁建築を手掛けた建築家であり、あの国会議事堂の設計・監修にも携わった人物でもあります。
正面の高さ約7mの円柱、両脇でさらに屋根を支える角柱、その上にどっしりと乗る三角形のペディメントなど、ギリシャの神殿を思わせる正統派のデザインは見事の一言です。
建設地から遠く愛知に移設はされましたが、西洋の技術・文化を学び、吸収していった明治という時代の総決算ともいえる建築となっています。
遠目で見ても迫力がありましたが、近づいてみると細かい凹凸や装飾が散りばめられていて、陰影による豊かな表情をみせてくれます。
近くで見てみると、例えばこちらのペディメント部分でも実に細かい装飾が施されていることに驚きます。
ちなみに移設されたのは閲覧室や事務室、ホールといった建物の表部分のみです。
横から見るとよく分かりますが、元の建物は1階の奥が巨大な書庫となっていましたが、建物の建物では切断面が煉瓦で塞がれていて、書庫部分はありません。
2.100年以上の時を経た内部空間をたっぷりと堪能
建物内部に入ると白の漆喰塗りの壁や天井と、欅の木材による格式高い内装が広がっています。
玄関横には2階に続く階段がありますが、吹き抜けからは自然光が降り注ぎとても気持ちのいい空間となっています。
移築部分は書庫以外ということもありますが、各所室には陽の光がふんだんにはいり、とても明るかったです。
大きな窓からは自然光とともに、周囲の自然が切り取られていてとても贅沢な眺めでした。
陰影豊かなな空間も素敵で、100年以上前の人々も、同じ空間を体験し、この場所で様々な本や新しい知識と出会ったのだと考えると感慨深いです。
私が訪れた時には常設展示の世界のミニチュア建築模型の展示が行われていました。
書棚には国内、海外合わせた数十点もの精巧な模型が展示されていて、建築ファンとしてはたまらない展示でした。
ちなみに明治の技術と文化の粋を集めてつくられた内閣文庫は、戦後の1948年には国立国会図書館の支部図書館となり、その後1971年に竹箸に国立公文書館がオープンすると、内閣文庫の蔵書は国立公文書館に移されることになります。
そして1980年代に一度解体されて1990年に明治村に移設・再オープンとなりました。
ちなみに国立公文書館についてはこちらの記事でレポートしていますので、興味のある方は是非あわせてご覧下さい。
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・竹橋「国立公文書館」貴重な公文書の世界を体感できる隠れたオススメスポットをレポート
歴史の中で様々な紆余曲折を経ましたが、結果として現在もその姿と空間を体験できるのはとても幸福なことだと思います。
明治村には他にも様々な歴史的建造物があるので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。
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内閣文庫
設計:大熊喜邦
住所:愛知県犬山市字内山1 博物館明治村内
旧住所:東京都千代田区千代田
竣工:1911年
移築年:1990年
備考:登録有形文化財
ホームページ:https://www.meijimura.com/
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