今回は兵庫県神戸市にある神戸文学館を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。
1.紆余曲折を経て受け継がれた赤煉瓦の文学館を訪問
今回神戸旅行に合わせて様々な文学スポットを訪れてきたのですが、今日紹介するのは神戸市の東エリアにある神戸文学館です。
神戸文学館は、王子公園に隣接した敷地につくられた文学館で、地元神戸出身の作家や神戸ゆかりの文豪に関する資料を収集・展示しています。
王子公園といえば年間約100万人を超える来園者数を誇る神戸市立王子動物園があることでも知られる公園ですが、そんな公園の南西に佇むのが今回の目的地である神戸文学館です。
神戸文学館の建物は、今から120年前の1904年に建てられた関西学院のチャペル建築がそのまま使われていて、真っ赤な煉瓦の建物がランドマークとなっています。
外観は綺麗になっていますが、一部には戦禍の跡が垣間見られたりと、歴史の積み重ねを感じます。
このチャペルは昭和初期に関西学院が移転し他の校舎が解体されたあとも神戸市に売却されて残され、戦後には瀬戸内海観光館、市民美術教室、アメリカ文化センターといった様々な施設として使われてきました。
文学に関係した施設となったのは1960年代のことで、はじめは神戸市立中央図書館の分館として、その後1989年まで神戸市立王子図書館として使用されました。
建物に大きな契機が訪れたのは1993年のことで、神戸の教会や学校建築を数多く手掛けたウィリアム・メレル・ヴォーリズの創設した一粒社ヴォーリズ建築事務所が大規模な改修・復元を行い、神戸市立王子市民ギャラリーとしてリニューアルオープンしました。
この改修によって戦禍によって失われていたチャペルの尖塔や装飾が復元され、また度重なる改修によって変化していた様々な部分も合わせて復元・再現され、現在の文学館の姿となりました。
神戸市立王子市民ギャラリーは、2006年に神戸文学館の形でリューアルされましたが、歴史を辿ると正に紆余曲折、様々な歴史の積み重ねによってつくられた文学館であることが分かります。
現在では高い建物が当たり前となりましたが、当時としては丘の上に立つ尖塔や、大ボリュームの堂々とした煉瓦造の建築は街のシンボル的な存在だったのことが想像できます。
2.神戸ゆかりの文豪や文学作品の世界を堪能
館内は入口より向かって左側のスペースが受付や図書コーナーとなっていて、右側のスペースが常設展示室と企画展示室を兼ねた大空間となっています。
ちなみに入館料は無料なので、誰でも気軽に訪れることができるのも嬉しいポイント。
常設展示では神戸ゆかりの作家として小泉八雲、谷崎潤一郎、司馬遼太郎、林芙美子といった文豪から、風立ちぬで知られる堀辰雄や、少年Hなどで知られる妹尾河童など約40人の資料が展示されていました。
展示スペースは決して広くはないですが、様々な作家の原稿やスケッチなどはどれも興味深く楽しめました。
ちなみに常設展示コーナーは写真撮影不可でしたが、このときの企画展示は写真OKとのことでした。
私が訪れた時の企画展は、フタタビ参上かなしきデブ猫ちゃんの冒険 in ひょうごが開催されていました。
かなしきデブ猫ちゃんは、2018 年に作家である早見和真さんと絵本作家かのうかりんさんによってつくられた創作童話で、今回の展示では神戸新聞に連載された兵庫編をメインにした展示でした。
この本は初見でしたが、シュールだけどじっと見ているとどこか愛着が湧いてしまうデブ猫ちゃんの魅力が伝わってきて面白かったです。
ふと上を見上げるとハンマービーム・トラスと呼ばれる工法で掛けられた特徴的な屋根の架構が目に飛び込んできます。
チャペルの大空間を使った贅沢な建物で、文学の世界をたっぷりと堪能できました。
この他にも葡萄蔓文様の特徴的な窓のガラス模様など建物的にも注目ポイントが満載で、建築ファンとしては二重に嬉しい文学館体験ができました。
今回は参加できませんでしたが、文学館では旧チャペルの空間を利用したクリスマス・アカペラ・コンサートや、様々な特別イベントも企画されているようなので、次回訪れたときにはこうしたイベントも体験してみたいと思います。
歴史ある建築と興味深い展示をたっぷりと堪能して、この日の本棚巡りも大満足のものとなりました。
とてもオススメのスポットですので、皆さんも機会があれば是非訪れてみてくださいね。
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神戸文学館
住所:兵庫県神戸市灘区王子町3-1-2
アクセス:王子公園駅、灘駅北出口から徒歩7分
オープン年:2006年(建物の竣工は1904年)
開館時間:
平日10:00〜18:00
土曜日・日曜日・祝日9:00~17:00
休館日:水曜日
入館料:無料
その他:国登録有形文化財
ホームページ:http://www.kobebungakukan.jp/
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