神奈川「小田原文学館」で文豪たちの足跡を辿りながら素敵な建物を満喫

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こんにちは、やまです。
今日は神奈川県小田原市にある小田原文学館を訪れてきましたので、その模様をレポートしたいと思います。

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1.小田原の注目文学スポット「小田原文学館」

実はこの日の午前中は、現代美術家の杉本博司氏が手掛けたランドスケープ・建築 江之浦測候所を訪れたのですが、午後に時間が空いたので、帰り道の途中である小田原を散策することに。

小田原は北原白秋や坂口安吾といった詩人・文豪が暮らし、多くの文化人を輩出する文学にゆかりの深い街で、調べてみると、駅から歩ける範囲に小田原文学館があることが判明したので立ち寄ってみることに。

小田原文学館は、明治~昭和初期にかけて活躍した政治家 田中光顕氏の別邸を改修して1994年にオープンした文学館です。
さらにその設計を手掛けたのは建築家の曽禰達蔵(そね たつぞう)氏というから、建築ファンとしてはテンションが上がります。

小田原文学館外観

曽禰達蔵(そね たつぞう)氏は工部省工学寮(現在の東京大学工学部)の第一期生であり、後に世界遺産長崎造船所 占勝閣(1904年竣工/世界遺産)慶應義塾大学図書館(1912年竣工/重要文化財)、住宅だと小笠原伯爵邸(1927年竣工/東京都選定歴史的建造物)といった名建築を生み出した建築家です。
1937年に竣工した小田原文学館は彼の最後の作品でもあり、国の登録有形文化財にもなっています。

小田原文学館もそうですが、文学館と言えば、かなりの高確率で建築的にも見どころが満載の建物というのは建築・文学好きとしては嬉しい限り。

小田原文学館が建つのは駅から20分ほど歩いた、小田原城周辺の賑やかな雰囲気から少し離れたエリア。
深く生い茂る木々と、小さな庭園と文学館。
これだけで多くの文学者や文化人が小田原に居を構えた気持ちが伝わってきます。

文学館の敷地に入ってすぐの所には、小田原出身の詩人・評論家北村透谷(きたむら とうこく)の記念碑があります。
北村透谷は25歳という短い生涯ながら、少し年下の島崎藤村や泉鏡花らにも大きな影響を与えました。

2.素敵な建築と共に、小田原ゆかりの文学者たちを知る

右手に進むと見えてくるのが、小田原文学館本館(旧田中光顕別邸)です。
ちなみに小田原文学館はこちらの本館と、尾崎一雄邸書斎さらに奥にある白秋童謡館の3館で構成されています。

当時邸宅としてはまだ珍しかった鉄筋コンクリート造3階建ての建物は、当時アメリカで大流行していたスパニッシュ様式を取り入れたモダンなデザインです。
すぐ隣には、管理棟として使われている木造の別館が隣接しています。

スパニッシュ様式のトレードマークともいえる屋根の瓦は、すべてスペインから輸入したものだそうです。
このスパニッシュ様式は、この時期の文化人や政府関係者の邸宅に多く見られます。
例えば現在は美術館として一般公開されている東京都庭園美術館は、小田原文学館よりも4年早い1933年竣工の(旧朝香宮邸)もスパニッシュ風の建物です。

東京都庭園美術館(東京都港区/1933年竣工)

比べてみると、とても似ていて面白いですね。
ちなみに設計者の曽禰達蔵氏は1927年にスパニッシュ様式の邸宅旧小笠原伯爵邸(東京都新宿区に現存)を設計していて、そこで得た知見を活かして、遺作となった旧田中光顕別邸(小田原文学館)が建てられました。

エントランスの石段を3段上がったところが玄関です。
文学館の入館料は、一般250円、小・中学生100円ととってもリーズナブル。
このチケットで、文学館本館の他に尾崎一雄邸書斎と白秋童謡館が入れます。

文学館の案内板で見えずらくなってしまっているのが少し残念ですが、アイキャッチのタイルがとっても素敵でした。

内部は撮影禁止だったので写真はないのですが、1階は尾崎一雄川崎長太郎、先ほど記念碑を見た北村透谷ら小田原出身の展示がされています。
直筆の原稿やメモだけでなく、衣類や身近な生活用品も合わせて見られるので、文豪たちがぐっと身近な存在になります。

2階では、谷崎潤一郎や坂口安吾など小田原に居を構えていた文豪の展示などが興味深かったです。
谷崎潤一郎は、この旧田中光顕別邸の建物が完成する前に転居してしまったそうですが、この建物のすぐ近くに住んでいたそうです。

1階のサンルームや屋上のバルコニーも見学出来て、まるで当時の文化人になった気分です。
建築好きとしては、屋上のバルコニー壁の上部の瓦も見逃せません。
スパニッシュ様式を取り入れた日本の建物は、屋根は雨の多い日本の気候に適応するため深い軒のデザインとなっていますが、この手すりは軒の出のほとんどない純スパニッシュ風になっているのがとても面白いです。

この他にも、明るい光の降り注ぐ中央の階段や、和洋の要素が融合した内装など見どころ満載でした。

3.旧尾崎一雄邸と白秋童謡館も見逃せない!

別館を出て、敷地内の緑道を進んだ先には、小田原市内にあった旧尾崎一雄邸「冬眠居」の一部が移築されています。
この冬眠居は戦後間もない時期に建てられたもので、2006年にこの地に移設されました。

移築に当たっては、規模を縮小しているそうですが、使わている材料はほとんど元々の建物のものだとか。
見学は外部からのみとなっていて、中に入ることはできませんが、文豪の書斎を垣間見るのはとても面白いですね。

さらに奥に進むと見えてくるのが、楼閣のようなデザインが特徴の和風建築 白秋童謡館。
こちらの建物は、本館より少し前の1924年(大正13年)に建てられたもので、現在は北原白秋に関わる様々な展示を見ることができます。

北原白秋といえば、日本を代表する童謡作家・詩人として知られていますが、実はその作品の多くは小田原の地でつくられたそうです。
こちらの建物は内部も見学することができ、昔懐かしい空間はまさに白秋の童話の世界にピッタリ。
前面に広がる日本庭園もたっぷりと味わないながら、のどかな小田原の地を満喫できました。

小田原文学館
住所:神奈川県小田原市南町2-3-4
アクセス:小田原駅から徒歩約20分
開館時間:
 3月~10月:10:00~17:00
 11月~2月:10:00~16:30
休館日:月曜日、年末年始
入館料:一般250円、小・中学生100円
オープン:1994年
竣工:1924年(白秋童謡館)、1937年(本館)
その他:登録有形文化財(本館、白秋童謡館)

※記載の内容は記事執筆時点のものですので、訪れる際はホームページ等で最新の情報を確認してください

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